DV・モラハラがあるのに共同親権になりそうなときに気をつけること

はじめに

配偶者からDVやモラハラを受けてきたにもかかわらず、離婚協議や調停の場で「共同親権」が検討されている——そんな状況に置かれ、不安を感じている方は少なくありません。

「相手と今後も関わり続けるなんて、考えただけで怖い」

「子どもを守りたいけれど、どう主張すればいいのかわからない」

「調停や裁判でうまく説明できる自信がない」

こうした不安は、けっして過剰ではありません。DV・モラハラのあるケースで適切な対策を取らずに手続きを進めることは、非常にリスクの高い選択です。

ただし、ポイントを正確に押さえれば、単独親権を認めてもらえる可能性は十分にあります。

本記事では、DV・モラハラがあるケースで弁護士が実際に行うことを、実務の観点から解説します。


なぜDV・モラハラがあっても「共同親権」が問題になるのか

改正民法のもとでは、離婚後の親権について共同親権という選択肢が新たに導入され、協議や調停の場で検討される場面が増えています。

しかし、重要なのは次の点です。

DV・モラハラが存在するケースは、共同親権が不適切と判断されるべき例外的な状況に該当します。

それにもかかわらず共同親権が問題となるのは、DV・モラハラの立証が難しいからです。

問題の本質は制度にあるのではなく、「その事実をいかに証明し、裁判所にどう伝えるか」にあります。


裁判所が親権判断で重視するポイント

裁判所は、共同親権・単独親権の判断にあたり、主に以下の要素を検討します。

  • 身体的・精神的な暴力や威圧行為の有無
  • その行為の継続性(一時的な出来事でないか)
  • 子どもへの影響(目撃の有無・心理的ダメージ等)
  • 父母間に将来にわたる協力関係が構築できるか

「怖かった」「つらかった」という主観的な感情だけでは、裁判所を動かすことはできません。客観的な事実として説明できるかどうかが、結果を左右します。


弁護士が実際に行うこと

① DV・モラハラの証拠を「使える形」に整理する

証拠を集めること自体は、依頼者ご自身でも行えます。しかし、それを裁判所に対して有効に機能させるためには、専門的な整理が必要です。

例えば、LINEのやり取りや録音データは時系列に沿って整理し、日記や記録は信用性を補強する証拠と組み合わせ、診断書がある場合は被害との因果関係を丁寧に説明します。

バラバラな証拠を「一貫したストーリー」として構成することが、弁護士の重要な役割のひとつです。

② 「なぜ共同親権が危険なのか」を法的に構成する

単に「怖い」「危険だ」と主張するだけでは不十分です。弁護士は以下の点を論理的に組み立て、法的主張として提出します。

  • なぜ父母間の協力関係が成立しないのか
  • なぜ共同親権が子どもの利益を害するのか
  • なぜ単独親権が必要かつ相当といえるのか

この構成の精度が、調停や裁判の結果に直結します。

③ 調停・裁判における発言を適切にコントロールする

依頼者が調停の場で直接発言する場面では、恐怖心や感情が先に出てしまい、話の整理がつかなくなることがあります。場合によっては「感情的な当事者」という印象を与え、主張の説得力を損なうリスクもあります。

弁護士が代理人として関与することで、必要な事実だけを正確かつ効果的に伝えることができます。

④ 相手方の「良い親アピール」に反論する

DV・モラハラ加害者は、調停や裁判の場で「子どものことは大切にしている」「夫婦間の問題と親子関係は別だ」と主張することが多くあります。

これに対して弁護士は、DVと親権行使は切り離して考えられないことを証拠と法的論理に基づいて反論します。

⑤ 面会交流の条件設定も同時に設計する

親権の問題と並行して、面会交流の設計も重要な実務です。

  • 面会交流の頻度・方法の制限
  • 第三者機関(支援センター等)の活用
  • 相手との直接接触を回避するための仕組み

子どもとあなた自身の安全を守るため、「どのように関わらせるか」まで含めて設計することが、弁護士に依頼する大きなメリットのひとつです。


よくある失敗パターン

DV・モラハラのあるケースで、残念ながら不利な結果になりやすいパターンがあります。

  • 証拠をほとんど残していない
  • 感情的な主張が中心で、事実の整理ができていない
  • 相手と直接やり取りを続け、消耗してしまっている
  • 「そのうちわかってもらえるはず」と楽観視してしまっている

これらは珍しいことではなく、実務でも頻繁に見られるパターンです。しかし、こうした状況で適切なサポートなく手続きを進めることで、不利益な結果につながるケースは少なくありません。


弁護士に相談することで変わること

DV・モラハラのある離婚・親権案件では、証拠の取り扱い、主張の組み立て方、そして手続きのタイミングによって、結果が大きく変わります。

弁護士に依頼することは、単に「代わりに話してもらう」ことではありません。あなたが経験してきた事実を、裁判所に届く言葉と論理に変えることです。


おわりに

DVやモラハラを受けてきた方が、「共同親権になるかもしれない」という不安を抱えながら手続きを進めることは、精神的にも非常に大きな負担です。

ただ、正しい戦い方を知り、適切なサポートを受ければ、状況を変える可能性は十分にあります。

「このまま進んで大丈夫だろうか」と少しでも感じているなら、早い段階で一度、専門家にご相談ください。

あなたとお子さんの今後の生活を守るために、まず話を聞かせていただくことから始めます。